北陸の冬2020年10月20日

温暖化の影響なのか、近年では昔ほど雪が降らなくなりましたが、私が子供だった頃の北陸の冬は毎年豪雪で、12月初旬に雪が降り始めたら最後、あたり一面真っ白い世界に様変わりし、翌年3月の雪解けまで土を見る事はありませんでした。

冬が近づくと雪の重みから家を守る為「雪囲い」をします。家の周りに木の枠を組み、その上から竹と藁で編んだ建て簾をかけて固定していきます。
「雪囲い」をした途端、それまで明るかった家の中が一気に薄暗くなってしまい、そんな生活が4ヶ月ほど続きます。

雪は静かな夜ほど大雪になり、夕方は30センチ程の積雪が朝には1メートル以上になってるのなんてザラでした。
軒下まで積もると、屋根のあたりが通路になって、そこから玄関に入るには雪を階段状にして、まるで地下室に降りて行くような感じでした。そうなると益々家の中は真っ暗になり、殆どかまくらの中で生活しているようでした。寒いのは寒いのですが、古い家に隙間風が入らない分、少しマシでした。

北陸の雪は、ただ降るのではなく、吹雪の日も多くありました。
そんな日でも当然学校には行きましたが、授業の途中で帰りが危ないと判断されると授業が打ち切りになり、生徒全員が体育館に集合したのち、5、6年生をリーダーにした集団下校になりました。
前も見えないほどの吹雪の中、微かに道らしい形跡が残った雪道を1列になって帰るのです。
たまに前から人が来ると、どちらかが少しだけ横に寄り道を空けなければすれ違えませんでした。

広い道にはブルドーザーが入り除雪するのですが、除雪した大きな塊の雪が家への入り道を塞ごうものなら、それはまるで雪の壁のようで低学年の子供ではとてもよじ登る事が出来なかったです。

そんな雪との戦いが過ぎ、春めいて雪が少しずつ解け始めると、雪の下から植物の緑と、土の茶色が見えてきます。
3、4ヶ月も真っ白い世界に閉じ込められていたので、緑と茶色が目に入った途端、物凄く嬉しかったのを今もはっきり覚えています。
そして冬の最後に「雪囲い」を外すと、家の中に明るさが戻り、プラス気持ちの明るさも戻ってくるようでした。